Ⅴ.1日のくらしの中での実践ステップ
—“できることを、少しずつ”。家庭の回復力を上げる日課づくり—
基本方針
- 完璧を目指さない(7割できたら合格)
- 変えるのは「一度に1つ」
- うまくいかなかった日は、原因探しより“立て直し”を優先
目次
- 朝・昼・夜の「3つのゴールデンタイム」
- つかれた時のリセット方法(親・子ども両方)
- 学校・放課後デイに「まかせきり」にしないために
- 親も成長していく「家族の未来宣言」
- 1週間のスタートセット(最小構成)
1. 朝・昼・夜の「3つのゴールデンタイム」
朝:一日を崩さない“土台づくり”の時間
朝の目的は「機嫌よく完璧に準備」ではなく、体と頭を起こすこと。
朝の3点セット(5〜15分でOK)
- 光:カーテンを開ける/ベランダに30秒出る
- 水分:ひと口でいいので飲む(温かいお茶・水・スープでも)
- 口を動かす:朝食は“量”より“スタート”
- 例:バナナ+ヨーグルト、味噌汁+おにぎり半分、チーズトースト半分
よくあるつまずき別・対策
- 朝食を嫌がる → 「一口だけ」「持ち運べる朝食(小さなおにぎり等)」にする
- 服を着ない → 選択肢を2つに絞る(AかB)/前夜に準備
- 出発前に荒れる → “直前の指示”を減らし、チェック表を見せる(声かけを減らす)
声かけ例
- 「全部やろうとしなくていいよ。まず水だけ飲もう」
- 「出発できたら今日は勝ち。忘れ物は一緒に考えよう」
昼:エネルギー切れを防ぐ“中間補給”の時間
昼は、午後の集中と気分を左右します。ポイントは血糖の乱高下を減らすこと。
昼のコツ
- 主食だけで終わらせず、たんぱく質を少し足す
- 例:卵、鶏肉、ツナ、豆腐、ヨーグルト、チーズ
- 水分を“まとめ飲み”ではなく、こまめに
- 放課後に荒れやすい子は、帰宅前後の補食を前提に組む
- 例:小さなおにぎり、牛乳/豆乳、果物+ヨーグルト
確認ポイント(家庭でできる観察)
- 帰宅直後の荒れが強い:疲労+空腹+感覚過負荷の可能性
- 学校で食べられていない:量や匂い、時間、周囲の刺激が影響していることも
夜:回復と成長の“修復タイム”
夜の目的は「反省会」ではなく、回復して寝ること。
夜の優先順位
- お腹を満たす(消化に負担をかけすぎない)
- 入浴・ストレッチなどで体を緩める
- 翌朝がラクになる準備を“少量”する
夜のルーティン例(20〜40分)
- 夕食(腹八分+汁物)
- 入浴 or 足湯
- 明日の準備(ランドセル/連絡帳だけ等、最小)
- 読み聞かせ or 静かな時間
- 消灯
夜のNGになりやすいこと
- 寝る直前の説教・尋問(脳が覚醒し、寝つきが悪くなる)
- 「できた/できない」の採点(家の中が常にテストになる)
声かけ例
- 「今日はここまでで十分。体を休めるのが仕事だよ」
- 「明日の自分が助かる準備を“1個だけ”しよう」
2. つかれた時のリセット方法(親・子ども両方)
疲れている時ほど“正論”は届きません。短時間で戻れるリセット技を家族で共有しておくと、衝突が減ります。
子どものリセット(3〜10分)
A:感覚リセット
- 暗めの部屋/静かな場所に移動
- 毛布・クッション・ぬいぐるみ等で包む
- イヤーマフや静かな音楽(合う子だけ)
B:体リセット
- 水分をひと口
- 背中を壁に付けて深呼吸(4秒吸う→6秒吐くを3回)
- その場でジャンプ10回/階段1往復(落ち着く子に有効)
C:ことばリセット(短く)
- 「今、疲れがMAXだね」
- 「安全に落ち着く場所へ行こう」
- 「落ち着いたら、次を一緒に決めよう」
コツ:理由を聞くのは落ち着いてから。“今は整える”が先。
親のリセット(30秒〜5分)
親の目的は「正しく対応」より「燃料切れを起こさない」こと。
即効(30秒)
- 目線を外して、息を長く吐く(6〜8秒)を3回
- 水を一口
- 肩を下げる(力を抜く動作を意識)
短時間(3分)
- トイレ・洗面所・ベランダなど“退避地点”を決めておく
- 自分に言う固定フレーズを用意
- 例:「今は危険回避が最優先」「勝ち負けじゃない」
10分取れる時
- 家事を1つだけ捨てる(洗濯畳まない等)
- 連絡・相談を1件だけする(家族/支援者/メモでもOK)
3. 学校・放課後デイに「まかせきり」にしないために
“任せる”と“丸投げ”は違います。家庭ができるのは、情報の循環と家の軸を作ることです。
① 共有するのは「困りごと」より「取扱説明」
学校やデイに伝えると良い項目(短文でOK)
- 何があると崩れやすいか(音・空腹・予定変更など)
- 落ち着く方法(静かな場所、水分、短い休憩)
- 効く声かけ(肯定+次の一手が短い)
- 家での成功パターン(例:選択肢を2つにする)
② 連絡帳・面談は“3点方式”で短く強く
- 事実:今日あったこと(短く)
- 影響:家ではどうだったか
- お願い:次に試したい1つ
例:
- 事実「帰宅後に泣いて荒れました」
- 影響「空腹と疲れが強そうでした」
- お願い「下校前に水分と一口補食の声かけが可能か」
③ 家庭の軸を決める(学校基準に合わせすぎない)
- 家での最優先:睡眠、便通、食事、水分、安心
- 宿題や課題は「体力がある日に前倒し」「最小提出」も戦略
- 週のどこかに“回復日”を入れる(予定を詰めない日)
④ 困りが続くときの相談先を整理
- 学校:担任+養護教諭+支援コーディネーター等
- 放課後デイ:管理者+児発管(いる場合)
- 医療:小児科、発達相談、心身症外来など(状況に応じて)
4. 親も成長していく「家族の未来宣言」
家族は“完成形”ではなく、更新していくチームです。宣言は、ルールではなく方向性を揃えるための言葉。
家族の未来宣言(テンプレ)
以下を家族用に書き換えて、紙に貼れる形にします。
宣言
- わたしたちは、失敗してもやり直せる家族です。
- 体調(睡眠・空腹・便通)を最初に整えます。
- 注意より先に、安全と安心を作ります。
- できたことを数え、できない日は回復を優先します。
- 困ったら相談し、ひとりで抱えません。
家族会議(5分でできる)
週1回(無理なら隔週)でOK。質問は3つだけ。
- 今週、よかったことは?(小さく)
- しんどかったことは?(責めない)
- 来週、変えるのは1つだけにすると何?
5. 1週間のスタートセット(最小構成)
まずはこれだけに絞ると続きます。
- 朝:光+水分+一口朝食
- 夕方:帰宅後すぐ補食(小さく)+静かな休憩3分
- 夜:反省会をしない/寝る前の準備は「1個だけ」
- 親:退避地点を決める(30秒の呼吸)
- 連携:学校/デイに「落ち着く方法」と「効く声かけ」を共有
必要なら、家庭状況に合わせて「平日版/休日版の具体的タイムテーブル(起床〜就寝)」に落として作れます。
お子さんの年齢、朝の出発時刻、帰宅時刻、いちばん崩れやすい時間帯(例:夕方・宿題前など)を教えてください。
